if not の訳(3種)
先日、オバマ大統領の回顧録での「if」を使った表現が話題になりましたね。
「pleasant if awkward 感じが良いが厄介」と誤訳された件です。
結局
pleasant if awkward 「ちょっとやりにくいが、感じがよい」
という、解釈が正しいという風におさまりましたね。
「形容詞 if 形容詞」という形があり、重点は前の形容詞にあるわけです。
この形は、知らないと「全く違う解釈をしてしまう!」種類の文法ですよね。
今回は、この形とよく似ている 「if not」 の表現について、簡単に3種類ご紹介したいと思います。
① if not :そうでなければ、もし~でなければ
普通 if not とくれば、こう訳したくなる。という一番ポピュラーな形ですよね。
He’ll pick you up. If not I’ll come.
リーダーズ英和辞典/リーダーズプラス
彼が拾ってくれるはず、でなければ、僕が来るよ
If not you, then who?
君の他にだれが?
② A if not B:Bとは言わないまでもA
if not の前後に、比べるもの(AとB)がくっついている形です。
この訳は「譲歩型」と言われています。
譲歩型の解釈は「Bではない」ということを事実として認める
英語の構文150 second edition
この型は「Bではない。だけど、Aとは言える。」というイメージになるわけです。
He is pleasant, if not charming.
英語の構文150 second edition
彼は魅力的ではないけれども、少なくとも感じのいい人だ。
pleasant =A
charming=B
「charmingではない。でも pleasantではある。」
というイメージでしょう。
They welcome China’s investment, if not influence.
リーダーズ英和辞典/リーダーズプラス
中国の影響はともかく、投資は歓迎している。
③ A if not B : Aであるが、ひょっとすればB
②と全く同じ形ですが、AとBの重点が全く違いますね。
この訳は「進展型」と言われています。
伸展型は、「Aであること」から一歩進んで「Bである」可能性を示唆する。伸展型の場合には、”A if not B” のAとBは意味上同じ尺度の上にあり、BがAより高い位置を占める。
英語の構文150 second edition
この型は「Aである。Bでさえあるかもしれない。」というイメージですね。
He is pleasant, if not charming.
英語の構文150 second edition
彼は確かに感じのいい人だ。魅力的と言ってもいいかもしれない。
pleasant =A
charming=B
先ほどは
「charmingではない。でも pleasantではある。」
となりましたが
今回は
「pleasant だ。charmingでさえあるかも。」
となるわけです。
いやいやいやいや!これはないわ!
と叫びたくなる気持ち、分かります。
意味が違っちゃいますからね…。
同じ形ですし、どちらの意味を取るか、は文脈による判断を必要とするわけです。
He makes most, if not all, of the important decisions for his company.
英語の構文150 second edition
彼が、会社のほとんどの、ひょっとしたらすべての重大決定をしている。
※彼が、会社の全てとは言わないまでも、ほとんどの重大決定をしている。になる可能性もあると思います。
※②の例文 They welcome China’s investment, if not influence.(中国の影響はともかく、投資は歓迎している。)は、伸展型だと(中国の投資を歓迎しているし、その影響すらも歓迎しているかも。)になってしまい、文脈的にあり得ないかな?と思います。
まとめ
A if not B の語釈については、「英文解体新書 北村一真 著」でも詳しく言及されていました。
ちょっとした表現ですが、解釈を取り違えてしまう可能性のある大切な表現なので、しっかり覚えておきたい表現ですね。
私も、if not が出てくる度に、少し構えてしまいます(笑)。そして慎重に読むようにしています。